不動産を売却したいけど売主本人がボケちゃってる場合

※このコラムは動画でも解説しています。


町田の司法書士佐伯知哉です。

 

今年も終わってしまいます。

不動産の売買も年内に済ませたいと考えられている人が多いので、

実際12月は立会の仕事も多くなります。

反動で例年1月は結構ヒマです(焦)!

ウチの事務所だけでしょうか!!

 

さて、今回は不動産の売却の時に問題となることをテーマにします。

 

「認知症」です。

今や超高齢化社会となった日本では避けられない問題です。

 

不動産の売却というのは、「売買」という法律行為です。

売買とは、当事者の「売ります」「買います」の意思が合致して初めて効力が発生します。

 

ですので、売却するにも「売ります」の意思がはっきりしていないと法律的に無効な行為となってしまいます。

 

たまにイケイケな(表現古いですか?)不動産屋から、「認知症気味の売主なんだけどさ~、先生なんとかしてよ」と言われることがあります。

 

なんとか出来るものなら、なんとかしようと思うのですが、もし認知症で意思能力ない場合は売買契約が「無効」となりますので、一旦名義を買主に移していたとしても、それはきちんと名義を取得したことにならないので、買主への所有権移転登記を消して、元の売主名義に戻さなければならなくなります。

だって契約は無効なのですから、無かったことにしなければなりません。

 

これだと、当事者に多大な損害が発生することになるので、あまり強引に進めてしまうと不動産屋さんにしても、たった1件の仲介手数料のことでとんでもない損害を被る可能性もあるわけです。もちろん、司法書士も然りです。

 

前置きが長くなりましたが、じゃあこういったケースではどうすればいいのでしょうか。

 

まずはお医者さんに診断してもらいましょう

植物状態などで明らかに意思能力が無い場合を除いて、大抵相談に来られる方のほとんどがボケてるかボケてないか「グレー」な状態の場合です。

 

ちなみに相談に来られる方ですが、本人が来ることはまずありません。

ほぼほぼ(最近こう言う人多くないですか?)親族が来ますのでそういった部分でもきちんと本人の売却意思を確認しなければなりません。

 

話しは戻りますが、グレーな売主(色味がグレーという意味ではありません)の場合にどうしても売却したい不動産屋や親族から「先生、大丈夫ですよね?いけますよね??」と迫られることがありますが、司法書士は医者ではありませんので、正直ボケてるかボケてないかなんて分かりません!!

 

コミュニケーションを取ってみて、明らかに売却の意思が確認出来て質問にもしっかり答えてもらえればOKですし、自分の生年月日も言えないようだとOUTです。

これだと白黒はっきりするのですが、問題は「グレー」な場合なのです。

 

そういった場合はやはりプロに依頼しましょう。

医師の診断で意思(イシイシとうるさいですね)能力があれば当然OK、意思能力が不十分な場合や無い場合だと対応策を考えなければなりません。

 

もし、意思能力が不十分な場合、無い場合にしても今後の手続きでいずれにせよ医師の診断書は必要となるので取っておいて損はないです。

 

ボケちゃってた場合

意思能力の度合いは、様々ですが話しを分かり易くするために、意思能力が無いケースだとしましょう。

もう完全にボケちゃってるケースです。

 

この場合は本人単独では売買契約は出来ません。

「売る」という意思がなく、理解も出来ないからです。

 

こういったケースでは、皆さんも耳にしたこともあるかもしれませんが「成年後見人」という法定代理人を立てる必要があります。

 

成年後見人には本人の財産を管理するのが職務ですが、きちんとした理由があれば処分することも出来ます。

このあたり詳しく書き出すとかなり長くなるので割愛しますが、本人に意思能力が無いのであれば成年後見制度を利用しなければ法律的に有効な売買を行うことは出来ません。

 

成年後見制度の問題点

じゅあ成年後見人をちゃっちゃと選んで、ちゃっちゃと売却してしまえばいいと思ってしまいませんか?

そうはいきません。

まず、成年後見人の候補者はこちらで選ぶことは出来ますが、その候補者が成年後見人になれるかどうかは最終的には裁判所の判断です。

話しは前後しますが、成年後見人を選任してもらうためには、家庭裁判所に対して申立ての手続きをしなければなりません。

 

こちらが申し立てた候補者どおりの人が選任されることもあれば、裁判所が決める司法書士なり弁護士なりが選任されることもあります。

まったく面識のない赤の他人が成年後見人として本人の財産を管理する場合もあるわけです。

 

そして、ここが一番大事なのですが、本人の不動産を売却するには「正当な理由」がなければなりません。

本人の意思能力が無いのをいいことに好き勝手に財産を減らしたり散在されては困るからです。

正当な理由とは、例えば、本人が施設に入居する費用が必要とか、空家状態のなっているので防犯や管理の問題とか、です。

もちろん、不動産売却で得たお金を親族が私利私欲のために使うことは許されません。

このあたりきっちり管理するのも成年後見人の仕事です。

 

また、本人の居住用の不動産の売却であれば裁判所の許可が必要となります。

居住用の不動産とは、今現在住んでいる居宅はもちろんのこと、現在施設に入居していても認知症が回復した場合などに戻る場所であるときも含みます。

 

まとめ

長々と書きましたがまとめますと、

・売主本人が認知症などで意思をはっきり確認出来ない場合はお医者さんにきちんと診断してもらいましょう。

・意思能力が無かったり不十分な場合は成年後見制度を利用しましょう。

・成年後見人がついても理由もなく不動産を売ることは出来ません。あくまで本人のために必要な場合にのみ不動産を売却することができます。

・本人の居住用不動産の売却には別途裁判所の許可が必要です。居住用不動産以外でも不動産売却など高額な金銭の移動がある場合は裁判所に相談してからするようにしましょう。

 

以上です。

 

この仕事をしていますと売主本人の意思確認をすることが多いです。

成年後見制度を使えば、本人のために不動産を売却したり、財産管理をすることができるのですが、出来れば事前に対策を打っておいた方がいいです。

 

例えば、任意後見や民事信託などですね。

何事も早め早めの対策が吉です。

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