子供がいない夫婦は絶対遺言書を残しておきましょう

当事務所では、相続関係の手続きをお手伝いすることが多いです。

中でも一番多いのは相続登記、つまり被相続人名義の不動産を相続人に変更する登記手続きになります。

 

数多くの相続手続きをご依頼いただく中で、実務をしている感覚として遺言書を残している方は10人中1人くらいでしょうか。もうちょっと少ないかもしれません。

 

遺言書があると相続登記がすごく楽になるのですが、無ければ戸籍の収集から遺産分割協議など事務手続きから相続人同士の話し合いまで時間と手間がかかることが多いです。

 

戸籍収集などは決まっているものを取得する作業になるので、慣れればそれほど難しいものではありません。

ですが、遺産分割協議については相続人の皆さんで話し合いがまとまらない限りは進まないわけで、これは司法書士がどうこうできません。

 

遺言書があれば被相続人が生前に財産の分配方法を指定できるので、遺留分を侵害しているなどの事情がなければ死後の手続きはスムーズに進みます。

 

ですので、「とにかく遺言書残しましょうね!」とコラムやセミナー等で啓蒙活動を行っているのですが、まあなかなか私一人が頑張っても知れているわけでして、もっとメディアなんかで取り上げてくれればなぁと日々思っています。

 

人は問題に直面しないと先送りしたり楽観的に物事を考えてしまいます。

夏休みの宿題をスケジュール通りにきちんとこなせた人はクラスで何人いるでしょうか。

誰しも「まさか自分が・・・」と現実に起こり得る問題をきちんと考えていなかったり、考えていても重い腰があがりません。

 

私としては、基本的に世の中の人全員が遺言書を残して欲しいと考えているのですが、実際問題それは難しいので、全員じゃなくても特にこんな方は必ず遺言書を残して下さいという一つの事例を上げさせてもらおうと思います。

 

子供がいない夫婦が遺言書を残さなかったら・・・

夫Aさん(80歳)、妻Bさん(75歳)には子供がいません。

先日、Aさんが亡くなりました。

Aさんの遺産は自宅マンション(時価評価3,000万円)と預貯金が1,000万円ありました。

Aさんには兄弟(兄Xと妹Y)がいます。

ですのでAさんの相続人はBさん、X及びYとなります。

 

葬儀の後にBさんが義兄Xと義妹Yと相続のことについて話した時には、Bさんの今後の生活のこともあるだろうからとXとYは相続手続きに無償で協力すると口頭で約束しました。

 

四十九日も終わって少し落ち着いたのでBさんは司法書士に不動産と預貯金の相続手続きの相談に行きました。

司法書士に依頼をし、戸籍収集や遺産分割協議書の作成も済み、いざXとYに遺産分割協議書にハンコをもらおうと連絡したのですが、日程調整の約束をしようとしてもうやむやになったり要領を得ない回答をします。

 

数日後、XとYの代理人を名乗る弁護士からBさんに、XとYの法定相続分相当の財産の引き渡しを要求する手紙が届きました。

 

XとYの2名分を併せた法定相続分の割合は、遺産の4分の1となります。

Aさんの遺産である自宅不動産と預貯金の合計金額が4,000万円なので、その4分の1にあたる1,000万円をXとYに渡さなければなりません。

 

自宅マンションは居住中ですし、簡単に処分できるものではないので、渡せる遺産としては夫が残してくれた預貯金1,000万円です。

 

ですが、1,000万円を渡してしまうと、Bさんは少ない年金で何とか生活はできるものの万が一のケガや病気の備え、余生をゆとりを持って過ごすことが出来なくなってしまいます。

子供もいないので、誰かに面倒をみてもらう訳にもいかず途方に暮れてしまいました。

 

以上のような問題が、子供がいない夫婦では普通に起こりえることです。

 

残念ながら、XとYの要求は法律に従っていますので何の違法性もなく、Bさんはこれを拒絶することはできません。

世知辛いのですが、法律でそう決まっているのでこれはどうしようもないことなのです。

 

ですが、もしAさんがBさんに全財産を相続させる旨の遺言書を残していればどうでしょうか。

兄弟や姉妹には遺留分がないのでBさんが全財産を取得することができました。

 

自筆証書の遺言であれば便箋に「私の全財産を妻Bに相続させる。」と書いて、日付と名前を書いて印鑑を押せば良いだけです。

これで1,000万円がBさんのものになりました。

 

本当は遺言の内容に不備があってはいけないので、公正証書の遺言を作成した方が良いですが、わざわざ公正証書にしなくても良いですから、子供がいない夫婦は、必ずお互いに全財産を相続させるように遺言書を残しておいて下さい。

 

それだけで、こんな悲しいことが起こらなくて済むのです。

もしこのコラムを今読まれたのであればすぐに実践して下さい。

 

そして、きちんと間違いのない遺言書を書きたいのであれば是非司法書士に相談して下さい。

 

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