120年ぶりの大改正!主な改正民法の概要(前半)

私たちの生活に最も身近な法律といってもよい民法。

契約社会の現代において切っても切れない法律である民法。

その民法が令和2年4月1日から、債権関係の規定(契約等)を中心にリニューアルし、120年ぶりに改正。新民法が施行されました。

 

120年前というと明治時代!明治29年に民法が制定されてから現代まで、いくつかのマイナーチェンジは行われてきたものの、ここまで大掛かりなものは今回が初めて。

まさに大改正となったわけです。

社会や経済は日々目まぐるしく変化していますし、多数の判例や解釈論も実務に定着してきました。

120年前と現代とでは当然、民法の基本思想が変わってくるわけです。

そこで、平成21年10月にようやく重い腰を上げ、5年余りの審議を経て要綱案を決定しました。

そのころのキーワードのひとつに、「国民一般に分かりやすい民法」という観点から改正点を考えるというものがあります。国民一般に分かりやすいかは今後の経過を見守るとして、その一助となればと思い、主な改正点の概要をまとめてみました。

(1)消滅時効の見直し

時効というと、刑事事件の公訴時効を想起する方が多いと思いますが、実は民法にも時効があります。

そのなかの消滅時効とは、権利が消滅するハナシです。

例えば、お金を貸している債権者がいたとして、請求等なにもしないまま一定の期間が過ぎると、お金を返して、といえる権利が消滅する制度です。この一定の期間が、旧民法では状況別に分けられており複雑で分かりにくいものだったのですが、今回の改正により原則的には、

知った時から5年

権利を行使することができる時から10年

というシンプルなものになりました。

(2)法定利率の見直し

法定利率とは、利息を支払う合意は当事者の間であるが詳細な利率を取り決めなかった場合や、交通事故の損害賠償などの遅延損害金に適用される、民法が定めた利率のことです。

旧民法では年5%と、一般的な利率を大きく上回る状態が続いていたことが問題となっていました。そこで改正民法では次のようになりました。

法定利率は、施行時には年3%

変動制にし、3年ごとに法定利率の見直しを行う

(3)個人保証人の保護の拡充

まず、根保証契約の個人保証人の保護が拡充されました。

根保証とは簡単に言えば将来的に発生する債務の保証をすることです。

例えば、賃貸借の保証人になるとき、まだ賃貸人は大家さんに対して債務はもっていませんよね。

将来的にもし賃貸人が家賃を払えなくなったときに保証人が保証するものです。

 

しかし、家賃滞納の金額だとまだ支払うことはできるかもしれませんが、例えば、借家が賃貸人の落ち度で焼失し、その損害額が保証人に請求されるケースなど、想定外の多額の債務を求められる事例もあります。

 

そこで改正民法では、個人根保証契約には極度額の定めを義務付け、この定めのない契約は無効としました。

極度額とは、保証人が保証する上限のことです。保証人が個人であるということを考慮し、債務者と共倒れにならないよう、責任の上限の金額を定めなさいということです。

 

また、別のケースで、事業資金を債務者が借りようとしている場合に、債務者と関係が近くない(例えば債務者が法人である場合のその法人の取締役や、債務者と共同して事業を行っている者が保証人となる場合には適用されない。)第三者である個人が保証人となる場合は、多額の債務になりやすいことから、保証する意思を公証人が確認するという過程が必要になりました。

保証契約のリスクを十分に理解したうえで保証人となっているかをチェックするわけです。このような趣旨ですので、こちらは根保証契約に限らず、通常の保証契約にも適用されます。

(4)定型約款の新設

定型約款とは、鉄道や電気・ガス、インターネットサイトの利用規約など、契約書の後ろについている細かい条項集のことです。

この約款は目を通すことがない方も多いと思いますが、こうした約款による取引は日々大量に行われています。

 

旧民法では約款に関する規定がありませんでしたので、この条項の合意は有効か、無効か、解釈より対応せざるを得ないという法的に不安定なものでした。

そこで、改正民法では約款に関する規定を新たに設けました。

 

定型約款を契約の内容とする旨の合意が当事者間であった場合、定型約款の条項の内容を詳しく相手方が認識していなくても合意したものとみなし、契約内容となることを明確化しました。

例えば、インターネットサイト上の同意しますのクリックを行うことがこれに当てはまります。

(5)錯誤が取消し原因に

錯誤とは、簡単にいうと勘違いのことです。

旧民法では錯誤による契約は原則的に無効と規定していました。

無効の場合、主張できる期間の制限がありません。

しかし、勘違いした本人に落ち度があるにもかかわらず、無効とすると効力が強すぎることが問題視されていました。

そこで改正民法では、これを取消しと改めました。取消しとした場合、5年経過することで時効により取消しを主張する権利が消滅することになります。

(6)契約解除の見直し

旧民法では、「履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。」と規定しています。

例えば、中古のパソコンの売買契約を締結したところ、売主が誤ってパソコンを落としてしまい、買主に引き渡すことができなくなったとします。

この場合、買主は売買契約を解除することができます。これは当然ですよね。

しかし、先ほどの規定には続きがあり、「ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない。」とあります。

 

これはどういうことか先ほどの例に当てはめると、債務者はパソコンの売主。

責めに帰することができない事由というのは売主の落ち度のことです。

先ほどは売主が誤ってパソコンを落としたので買主は契約を解除できましたが、例えば、引き渡せなくなった理由が、落雷による火災が発生したことにより、売主がパソコンを保管していた建物が焼失したとしましょう。

 

この場合、売主に落ち度はありあませんので、買主は契約の解除をすることができませんでした。

買主としては、契約を解除して、すぐに他のパソコンを探しにいきたいですよね。

 

そこで改正民法では、「債務者の責めに帰することができない事由によるものであっても解除を可能なものとする。」と改めました。

 

また、債権者の責めに帰すべき事由による場合には、債権者からの解除はできない旨も明記されました。これは当然ですよね。

買主の落ち度によりパソコンが壊れたとして、買主側から契約の解除を主張できるわけがありません。

 

ということで、ここまでできる限り簡潔には説明してきましたが、思いのほか長くなってしまいました。今回は(前半)として一旦区切りまして、近々、また続きを説明させていただきます。お楽しみに。

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