120年ぶりの大改正!主な改正民法の概要(後半)

今回は、改正民法の続きです。「主な改正民法の概要」の後半をまとめました。

前半はこちらから「120年ぶりの大改正!主な改正民法の概要(前半)

それでは早速見ていきましょう。

 

(7)売主の瑕疵担保責任の見直し

売買契約があったとき、売主が買主に引き渡した商品に欠陥があった場合の、売主の責任を、旧民法では「瑕疵担保責任」といっていました。

この瑕疵担保責任ですが、次のような問題点が生じていました。

  • 売買の対象が特定物のときしか適用されなかった(特定物とは中古の自動車など、替えがきかないもののことです)。
     
  • 買主は、売主に対し、契約の解除か損害賠償請求のどちらかしか責任追及ができず、選択肢が少なかった。
     
  • 旧民法の条文上の「隠れた瑕疵」という文言がわかりづらかった。ちなみに、「隠れた」とは買主がその商品の欠陥を知らなかったこと、「瑕疵」は欠陥のことです。
     

今回の改正により、瑕疵担保責任という名称は「契約不適合責任」に引き継がれました。

 

売主の責任は、契約に適合していない責任、つまり債務不履行責任となったわけです。

どういうことかといいますと、売主と買主の間で、売買の商品について品質や種類など、どこまでの合意があったか(取り決めがあったか)、契約の内容を重視するようになりました。

 

この内容に適合する商品を売主が履行していないときに、契約不適合責任の問題となります。

このことから、売買契約書の内容の取り決めについては、より重要なものになったといえます。

 

先ほどの問題点については、特定物・不特定物に関係なく適用されるようになりましたし、買主には、売買代金の減額や、商品の修補(修理)を請求するという選択肢もできました。

わかりやすさに関しては・・ややイメージしやすくなったでしょうか。

 

(8)原始的不能の場合の損害賠償規定の新設

原始的不能とは、契約成立の時点で既に債務が履行不能であることです。

 

例えば、不動産を契約したときに、契約時に既にその不動産が火事で滅失していた場合などが当たります。

 

この場合、旧民法においては契約無効となります。契約時に、対象である不動産が存在しないので、不可能なことは合意できないと考えるからです。

 

しかし改正民法では、契約(合意があったこと)を重視してこれを有効としました。

 

その結果、買主は売主に対して、債務の履行不能による催告なしの契約解除ができますし、売主の責めに帰すべき事由(火の不始末で火事になったなど)があれば、損害賠償の請求も併せてできるようになりました。

 

(9)隔地者間の契約の成立時期

買主と売主が遠方にいて、郵送で売買契約をしたとします。

旧民法ではこの場合、売買契約の成立時期は売主が承諾の手紙を発送したときでした。

つまり、まだ買主が知らない間に契約が成立していました。

 

まだ通信手段が未発達だった時代にできた法律なので、遠方の契約だと時間の間隔が空いてしまい、このような取引の迅速性を考慮した規定になっていました。

 

しかし、通信手段が発達した現代においては、郵送でも数日のうちに到着しますし、メール等を使えば迅速な取引は可能ですよね。

 

そこで改正民法では、売主の承諾が買主に到達したときを契約の成立時期としました。 これを到達主義といいます。

 

(10)危険負担の見直し

危険負担とは、売買等で一方の当事者の債務が、債務者の責めに帰すべき事由によらないで履行できなくなった場合に、当事者のどちらが、その危険を負担するかという制度です。

 

例えば、不動産の売買契約を締結して、その不動産が、買主に引き渡す前に地震によって滅失したとします。

地震は売主の責任ではありません。

 

この場合、旧民法では買主がその危険を負担します。

つまり売買代金を支払わなければならないのです。

買主は、建物は渡せないが代金は支払ってくださいと言われるわけです。

 

これでは、あまりに買主が可哀想ですよね。実際の不動産売買の契約書でも、ほとんどすべてといってもよいくらい、この危険負担の適用を排除する特約が付けられていました。

 

そこで、改正民法ではこの場合、買主は代金の支払い義務を拒むことができると定めました。売主は一応、買主に代金を支払ってといえるが、買主には請求の拒絶権を与えたというわけす。

もちろん、契約書にこれと違う特約を付けることも可能です。

 

(11)消費貸借契約の見直し

消費貸借契約とは、銀行からの金銭の貸し借りの契約などのことです。

旧民法では、この場合の契約は、要物契約といって、実際に金銭を借主に交付されるまで契約は成立しないという規定でした。

 

金銭が交付されるまで契約は成立しなのですから、借主としては、契約書を交わした後に銀行に対して「金銭を交付してください」という請求ができなかったわけです。

 

しかし、判例上は、合意のみによる消費貸借の成立も認められており、要物契約(金銭の交付が必要な契約のこと)か諾成契約(金銭の交付は不要で合意のみによる契約のこと)かの区別があいまいで、不安定な規定となっていました。

そこで、改正民法では、今までどおり要物契約の消費貸借契約の規定は残したままで、書面による消費貸借契約の規定を新設しました。

 

契約書で締結した消費貸借契約は諾成契約となり、契約書を交わしたときを、契約の成立時期としました。

なお、借主は、金銭の交付を受ける前はいつでも契約を解除できる旨の規定も設けられました。

 

また、その他の要物契約であった、使用貸借契約(貸主が借主に対し、ある物を無償で使用させる契約)や寄託契約(ある物を預けて、その物の保管をお願いする契約)なども、改正民法では諾成契約となりました。

 

というわけで、ここまで長々と説明してきましたが、これでもまだ債権法のごく一部です。

 

主な改正点を選んだつもりではありますが、最初に申しましたように、民法は私たちの生活に身近な法律であるため、改正した箇所は、ほぼすべてその生活に影響を及ぼすといってもよいくらいです。

ですので、すべて解説したいところではありますが、ここで一旦一区切りといたします。

 

相続法の改正箇所も今回は省略しておりますので、今後も少しづつ説明していければと思います。

ここまでご覧いただきありがとうございました。

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