住所変更の登記は実は奥が深いの巻

※このコラムは動画でも解説しています。


引っ越したり住所の変更があった場合にきちんと不動産の登記簿上の住所を変更していますか?
住民票を移したり、運転免許証の住所はすぐに変えると思いますが、住所変更の登記をきちんとやっている人はあまりいません。
不動産屋さんからも、売却する売主さんの住所が前のままなので何を揃えたらいいですか?という質問も受けることが多いので、登記簿上の住所変更登記について解説しようと思います。
ついでですので、結婚や離婚などによって氏名が変わった場合の登記についても解説します。

住所変更の登記

まず住所変更登記の方からいきます。
具体的にどういった書類が必要になるでしょうか。

一番シンプルなのは、登記簿上の住所から今の住所までの移転が一回のみの場合です。
例えば、登記簿上は「A市A町1番1号」で現住所が「B市B町2番2号」のような場合です。
この場合では、B市の市役所で住民票を取れば、前住所としてA市の住所が記載されていますので、A市からB市の今の住所へ住所移転した履歴が分かりますよね。
ですので、この場合は住民票が1通あればこれでこの住所変更登記の必要書類は終わりです。
シンプルです。

ややこしいのは、登記簿上の住所から今の住所になるまでの間に複数回住所変更を繰り返している場合です。
同一市内での移転の場合ですと、住民票に前住所や前々住所の履歴が残っているのですが、都道府県や市や区をまたぐと、前々住所以前の履歴は現在の住所地における住民票では確認できないのです。

こういった場合は、やり方が二つあります。
一つ目は、現在の住民票を取って、更に前住所の住所地で住民票の除票を取って、更に前々住所の住所地で住民票の除票を取るということを繰り返していくのです。
こうすれば、登記簿上の住所から現住所までの履歴が証明されるのですが、移転してきた住所地が遠方の場合など、住民票や除票の取得に手間や時間がかかってしまいます。

そこで実務的には、戸籍の附票というものを使います。
戸籍の附票とは、本籍地の市区町村役場で取得できるのもなのですが、その本籍地における住所の履歴が一覧で出てくるのです。
例えば本籍地がC県C市C町3番とします。
本籍地を移転していない限りでは、住所地を複数回移転した場合でも、C県C市に戸籍の附票を請求すれば住所の履歴が一覧として出てくるのです。
ですので、複数回住所移転をしているが、本籍地は変更していないというケースでは、戸籍の附票さえ取ってしまえば一撃で名変に必要な書類は揃うことになります。

ただし、住所と一緒に本籍地も複数回移転しているようなケースでは、住民票の場合と同じく前本籍地へ請求して、更に前々本籍地へ請求という形で手間は変わりません。

氏名変更の登記

次に氏名変更です。
氏名の変更といえば、結婚、離婚、養子縁組で姓が変わるのが代表的ですね。
住所のように複数回変更するというケースがあまり想定されないです。(無いことは無いですが)
ですので、必要書類はシンプルです。
戸籍謄(抄)本(氏名の変更が分かるもの)と本籍地入りの住民票の2点になります。
戸籍で氏名の変更が分かるのに、なぜ本籍地入りの住民票が必要かといいますと、戸籍には住所の記載がありません。
登記簿上の人物と氏名だけ同じだけかもしれませんので、住所も一致することを求められるのです。
氏名変更は簡単ですね。

書類の期限の問題

さて、以上は住所や氏名に変更があった場合でもシンプルなケースを紹介しました。
住所変更や氏名変更は実は奥が深くて実務書では青山修先生の「登記名義人の住所氏名変更・更正登記の手引」という司法書士としては必携の一冊があります。

司法書士としては必携ですが一般の方はよっぽどマニアックで趣味で読みたいという変人方でなければいらないですし、司法書士を目指して勉強中の方もこんなの読んでる暇があったら基本テキスト読んで下さいという感じです(笑)

ですので、細かいことはこちらの本に譲るとして、特に住所変更では注意しなければならない点があります。

それは、住民票や戸籍の附票の期限です。
この期限とは書類が発行されてからの期限ではありません。

印鑑証明書なんかですと、所有権移転登記に使用する際は、申請日において発行より3ヶ月以内のものを添付しなければならないのですが、住所変更登記の際の住民票や戸籍の附票のこういった意味での期限はありません。

では、何の期限かというと、「役所における書類の保管期限」なのです。
現在の住民票は、今存在しているのですから当然データを破棄されるようなことはないのですが、過去の住民票や戸籍の附票は、5年経てば廃棄されてしまうのです。
例えば、A市からB市に引っ越した場合に、A市の住民票は除票となりますが、除票となってから5年経過すると廃棄されてしまって、後で取得することはできません。

一つ前の住所であれば、現在の住民票を取れば載っているので問題ないかもしれませんが、住所や本籍地を転々と移転している場合に、前々住所や本籍地の住民票や戸籍の附票は5年到来ごとに廃棄されていってしまいます。

そうすると、いざ住所変更登記をしようとした場合に、過去の住所の履歴を証明することができなくなってしますのです。

さあ困りました。
公的な書面で住所の履歴を証明できないのです。
住所変更の登記ができないと、不動産を売る場合に所有権移転登記(買主への名義変更)に添付する印鑑証明書と登記簿上の住所が一致しないので、売却手続きができません。
ですのでもう諦めて下さい。

っというのは冗談として、まあやりようはあります。
実務的には権利証、上申書、取れるだけの住民票や戸籍の附票、不在住・不在籍証明書を添付して住所変更を申請しますが、正直この状態ですと素人の方には不可能かと思いますので司法書士に相談して下さい。

以上のように住所変更などの別にいつやっても良さそうな大したことなさそうな登記であっても放置しているとなかなか大変なことになります。

司法書士が関与する不動産登記は、登記義務というものがないので、やらなくても罰則みたいなものはありません。
プロである不動産屋さんも「いつやってもいいんでしょ?登記義務ないし」などと結構なめていることがあるのですが、放置していてまったく問題が出ないような登記手続きは存在しませんので、何事も早め早めに動いて下さい。
どうせやるなら早い方が楽です!

まとめ

  • 住所変更登記は住民票で住所の履歴を証明する
  • 複数回住所を移転している場合は戸籍の附票を取ると楽
  • 氏名変更登記は戸籍謄(抄)本と本籍地入りの住民票が必要
  • 住民票や戸籍の附票は除票になってから5年で廃棄されるので注意
  • 書類が廃棄された場合の住所変更登記はもうプロに頼もう
  • 登記はする義務がない場合でも早くやった方が絶対楽でっせ!

以上、今回は住所変更や氏名変更の登記に必要な書類(添付書類)についての解説をしましたが、これに加えて登記申請書も作成しなければいけませんのでご注意下さい。

 

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