会社設立時の定款の注意点
町田の相続,遺言,成年後見,会社設立の専門家,司法書士の佐伯知哉です。
今回は会社設立時に作成する定款中のある条項について書かせていただきます。
相続人等に対する売り渡しの請求
多くの司法書士が使用している、登記申請書類を作成する業務用のソフトや定款の雛型には、この『相続人等に対する売り渡しの請求』という条項が入っていると思います。
この条項はおそらく最近作られた会社(公開会社以外)であれば、ほとんど入っているのではないでしょうか。
一度、チェックしてみてください。
この条項の問題点
この普通に定款に鎮座している条項ですが、次のような文言になっています。
『当会社は、当会社の株式を相続その他の一般承継により取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。』
どういう意味かというと、会社の株主の一人が死亡した場合に、他の株主は、死亡した株主より株式を相続した相続人に対して、その株式を会社に売り渡しなさいと請求することができるということです。
メリットとしては、会社の経営にまったく関与のない相続人に対し、相続した株式の売り渡しを請求することができるため、相続人の中に会社にとって好ましくない者(暴力団等)がいる場合に売り渡しを請求して合法的に株式を買い取ることができますし、後々に株式が拡散していくことも防止することができます。
しかし反面、その会社の大株主が死亡した場合に、少数しか株式を持っていなかった、少数株主が大株主の相続人に対して、株式の売り渡しを請求することにより、会社を乗っ取ることができる可能性があります。
どう対応すべきか
多くの会社の場合は、設立時は同族会社であることが多いため、それ程問題にはならないのですが、設立時に一部出資してもらう第三者がいる場合には、極力加えない方が良い条項であると考えます。
会社が軌道に乗って、第三者から株式を買い戻した後に、必要であれば定款変更して加えればよいのです。
定款変更自体は、株主総会の特別決議で可能ですので、通常過半数以上の株式を持っていれば、1人で定款変更の議案を可決することができます。
定款は会社のいわば憲法となるものですので、会社設立の際は司法書士等の専門家からしっかり説明を受けて、疑問点はどんどんぶつけましょう。